おはようさん、りきです!
今回は車高調の寿命についてお話しします。
車高調、車高調整式サスペンションキットは、新車時からついている純正形状のサスペンションよりも寿命が短いと言われています。
車高調ってなんですぐだめになるん?
車高調の寿命が短くなってしまうのはいろんな理由があるよ
一般的に車高調の寿命は3年3万キロ前後が目安とされており、対して純正サスペンションは8~10万キロほどの使用に耐えるものがほとんどです。
なんでそんなに差あんねん..
たしかにこれだけの差は軽視し難い..そこで着目してほしいのが以下の2点!
- 車高調特有の形状による寿命への影響
- 純正サスと車高調、それぞれの用途による違い
今回は”車高調の寿命がなぜ短いのか”という疑問を解き明かします!
サスペンションのちょっと深いお話、そして車高調の寿命を伸ばす乗り方なんかを紹介していくよ!
そもそも寿命って?
ただ走るだけなら車高調であっても長期使用は可能でしょう。
では”寿命”の判断をどう下すのかが問題です。
サスペンションというのは車体を支えるコイルスプリング(いわゆるばね)とスプリングの上下動を抑え込むダンパーで構成されています。
寿命とはいっても、サスペンションが原因で走行不能になることは滅多にありません。それこそ事故などの衝撃による変形やスプリングが錆びて疲労破壊でもしない限り。
一般に寿命といわれる状態は、ダンパー内部のオイルやガスが抜け漏れてきている状態です。
長期の使用による熱や摩擦の影響でオイルシール等ダンパーの各部品が劣化し、中に封入されているオイルがにじみ出てきます。
車高調の場合、構造上このダンパーにかかる負荷が大きいため短期寿命の原因となっています。
形状による寿命への影響
そこでまず寿命に影響するのはスプリングやダンパーの容量。
減衰力によってスプリングの動きを抑制する際、ダンパーには熱が発生します。
温度変化はオイルシール、ゴムブッシュなど樹脂パーツの寿命を縮めます。
紙コップに入った水、バケツに入った水。温まりやすいのはどちらでしょうか?
答えは簡単、当然容量の小さなコップのほうが早く熱を帯びるでしょう。
車高を落とすことを前提としてコンパクトな設計になっている車高調。
十分な車高を確保し、ゆとりをもって設計できる純正形状サスペンション。
どちらが有利でしょうか。
もちろんこれだけではありません。熱の問題以外にも車高調は様々な制約を抱えています。
それらが寿命にどう影響するのか、掘り下げてお話しします!
純正形状の利点-メリット
まずは純正形状がどのようなものか、おさらいからです!
純正のサスペンション(ストラット)は、タイヤの上側に大きなスプリングの受け皿があり、その内側にダンパーがついています。
注目してほしいのはスプリングの直径の大きさ、そして台座によってスプリングに傾きがついていること。
まずスプリングの直径についてです。直径を大きくすることにより、ダンパーが位置するバネ内側にスペースが生まれます。
これによってダンパーの設計に余裕が生まれますし、上記画像の赤線が示すようにスプリングをダンパーに対して傾けて取り付けることができます。
問題はなぜこのような構造にするのか、ですよね
それはクルマが道を曲がるときに発生する左右方向の加速度(G)をサスペンションが支えなければならないため。
一般的によく使われているストラットの場合、クルマがカーブを曲がるときにかかる横向きの力がサスペンションに加わります。
このときスプリングに角度をつけることによって、ダンパーに加わる横向きの力を軽減し、ダンパーが動作する際の抵抗を削減させています。(壁に押さえつけられながら無理やり動いている状態を緩和させるイメージ)
カーブを曲がる際にタイヤから受ける遠心力に対抗する力を、バネをあらかじめ外向きに傾かせることで打ち消そうとしているのです。
当然、これらのことが実現できるのは、設計段階で車高が決められていて、タイヤの上側にバネが置けるだけの十分なスペースが確保できるからです。スペースの余裕から理想的な取り付けが可能となり、それによって各部品の負担も減るため、寿命の面では有利となります。
車高調の制約-デメリット
車高調はずいぶんとコンパクトですね。
車高を落としたクルマはタイヤハウス内のスペースも限られてきますからね。
その分タイヤの上下可動範囲も減り、本体もコンパクトなものになってきます。
車高調の場合、車高を落とすことが前提ですよね。車高が落ちるということはボディと足回りが接近するということ。その分タイヤの可動範囲=サスペンションストロークは短くなります。
車高を一定以上落とす場合、純正形状と同じくタイヤの上にスプリングを乗せるようなレイアウトを取ることは難しいです。あのような設計はサスペンションストロークが確保できる車高があってのもの。
タイヤの上がだめなら内側を利用するしかありません。そうなるとスプリングの直径も小さくなり、純正形状のように工夫を凝らしたレイアウトは取れません。
また、サスペンションストロークの制限から、車高調に使われるスプリングは硬いものになります。
硬いスプリングを使ってサスペンションの底付きを防止するわけですが、バネが硬ければそれを抑え込むダンパーも強い力が必要です。これらのことはすべて寿命を縮めることに直結します。
なんとなーく、分かってきたかも
ちなみに車高調ではダンパー内の構造とガス圧の違いによって単筒式、複筒式と呼ばれる2種類のタイプが存在し、耐久性の面でも多少関係してきます。
↓車高調の構造についてもう少し知りたい方はこちらへ!
用途による違い
純正形状サスペンション
当然ですが純正品は車を買った人すべてが使うもので、万人に適したセッティングになります。あまり固いバネは使いませんし、普段の街乗りやたまに遠出をするといったようなデイリーユースなど、クルマに負担をかけない使い方をすることが多いでしょう。
また純正品のため、もし耐久性が低かったとしたらその車自体の評価にも直結してきます。3万キロ走ってエンジン等の部品はまだまだこれからというときに、サスペンションだけ劣化がひどいとお客さんから苦情がきますよね。笑
そのため純正サスペンションは自動車そのものの寿命とある程度合わせこんで、耐久性を持たせなければいけません。
私自身2年ほど自動車会社で部品設計や耐久試験に関わっていましたが、そのためにかける時間、ノウハウは膨大なものでした。
性能向上のためにかけるコスト以上に、長期間性能を維持することを重要視して設計されているといえるでしょう。
車高調整式サスペンション
対して車高調を組みたい人というのは、やはり車に興味がある人です。車高を落としてカスタムを楽しんだり、車高調と合わせてスタビライザーや補強部品を組み込んでスポーツ走行をするといった使い方をされることが多いでしょう。もともとはスポーツシーンでセッティングを検討しながら使うものですから。
このような用途に答えるための車高調の設計や、ユーザーの使用用途そのものが耐久面では厳しいものとなります。
これらのことから、耐久性の評価として車高調が純正品に劣るのは当たり前とも言えます。もし車高調を膨大なコストをかけて耐久性を持たせて開発できたとしても、そんな高額な社外品はなかなか売れないでしょう。
車高調は基本的に分解整備(オーバーホール)ができますので、性能維持はそちらに任せたほうがよさそうです。
寿命を伸ばすにはどうすれば?
とはいっても車高調は決して安い買い物ではありませんから、少しでも長く使いたいですよね。
そのために“サスペンションの暖機運転”を意識するといいですよ!
サスペンション周りの寿命というのは、ダンパーのオイル漏れを指すことがほとんど。つまりオイルの外部漏れを抑えているオイルシールといった部品の劣化をいかに抑えるかがポイントです。
そこでオススメしたいのが、”サスペンションの暖機運転”です。
自動車はエンジンをかけ始めてから、しばらくはゆっくり走行して”暖機”をすることが多いですが、これはサスペンションにも当てはまります。
ダンパーは減衰力を発生させ、スプリングの不要な上下動を抑えこんでいますが、そのエネルギーは熱に代わります。
オイルは熱によって粘度が変わります。走行しながらオイルやゴムブッシュ類がある程度温まってくるまで、クルマを労わってあげましょう。
走り始めはデコボコした道はゆっくり走るなど、心がけてください。特に新品の場合は各部品が馴染むように慣らし運転を行うことが重要です。
また車高調は減衰力を調整できるものが多いです。ダンパーの減衰が強いとその分劣化も早くなるので、通常の街乗りなどでは減衰を低めにしておくと部品にやさしいかと思います。
以上、サスペンションのお話でした!参考になれば幸いです。
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