ども!りきです。今回はダンパーに関するちょっとマニアックなお話
ども!こんにちは、りきです。
今回はダンパーに関するちょっとマニアックなお話をします。
車高調について調べていると出てくるであろう、”単筒式”や”複筒式”といった用語。これらはサスペンション(ダンパー)内部の構造を表しています。
聞き慣れた言葉ではないでしょうし、どう違うの?どう選んだらいいの?と疑問を持たれる方もいるでしょう。
今回はダンパーのお話ということで、
- それぞれの構造についての解説やメリット・デメリット
- 用途や好みに合わせた適切な車高調の選び方
などなど、お話ししていきたいと思います!
単筒式と複筒式の違い
では最初に、それぞれの構造の違いを図に表してみます。
上図の左は単筒式、右が複筒式となります。
ピストンバルブという部分にオイルが通る細い穴が開いています。オイル中をピストンが上下に動くことで抵抗が発生し、車が段差を通過した後のバネの揺れを収束しています。
ダンパーに必要な機能とはいったいなんでしょうか?
それは以下のようなものです。
- ピストンに十分な可動範囲(ストローク)が確保されている
- オイル漏れ防止のシールなどによる余計なフリクションがないこと
- 長時間の作動においても安定した減衰力を発生し続けられること
上記3つの項目は、高性能なダンパーを設計するうえで重要視されています。
単筒式、複筒式それぞれについて、これら3つの性能要件に対するメリット・デメリットが存在します。一つずつ見ていきましょう。
それぞれの特徴-ここがイイ!ここはダメ!
それでは、3つの項目に着目しながらそれぞれの構造のいいところ、悪いところ、またそういった違いがなぜ生まれるのかを解説していきます!
1.ピストンのストローク確保について
ピストンのストロークでタイヤの可動範囲が決まります。乗り心地に大きく影響するダンパーの大切な要素です。以下の図をご覧ください。
ダンパーの内部は密閉された空間。そこにピストンが入り込むことで、ピストンロッド(棒の部分)が一緒にオイル室に入ってきますから、ロッド分の体積をどこかで圧縮しなければいけません。そのため圧力によって圧縮されるガスが封入されています。
単筒式の場合、ガス室とピストンが直列に配置されています。比較して複筒式はシリンダーケースが2重構造になっており、外側にガスが入っています。
図示されるように、複筒式のほうがレイアウト上ストロークを確保しやすい構造であることが分かります。
特に街中を走る市販車やサスペンションが柔らかい車の場合、ストロークもたくさん必要なので、単筒式より複筒式のほうが有利です。逆に言えばサスペンションが固められたスポーツカーなどの場合、どちらでも問題ないということですね。
2.余計なフリクション(抵抗)について
ダンパーというものは、オイルが通る穴のすき間を調整し意図的に抵抗を発生させているもの。とはいえオイルによる抵抗を除く想定外のフリクションは決して好まれません。
それらの余計なフリクションが生まれる原因を簡単に探っていきましょう。
まず一つは自動車がカーブを曲がるときです。タイヤに横向きの力が加わることで、サスペンションやダンパーにも,ピストンの軸方向とは異なる、横方向から力が加わります。
その際シリンダーケースの強度が足りていないと、わずかな変形によってピストンの動きが阻害されてしまうことがあります。
ではシリンダーの剛性が確保できるのはどちらなのでしょうか?・・・答えは単筒式です。
とはいっても単筒式であればいいわけではありません。上の図のように、単筒式は構造上倒立させて使用することができるのです。つまり逆立ち状態ということですね。この倒立式といわれるダンパー構造は、ケース自体がロッドと一緒にストロークするため、剛性を確保する上で大きなアドバンテージを持っています。
しかし、フリクションの原因は変形だけではありません。もう一つ大きな問題が”封入ガス圧“です。
複筒式はベースバルブと呼ばれるピストンバルブと似た役割をする部品がシリンダー底部についており、お互いの部品によって減衰を発生させるため、ガス圧を低く設定できます。
対して単筒式を同じように低いガス圧にしてしまうと、勢いよく押されてきたピストンに負けてガスが圧縮しきってしまい、ピストンロッド分の体積を超えて縮んでしまいます。すると気泡が発生して減衰力が不安定となります。そのため単筒式のガス圧は高めに設定されています。
この高めのガス圧が各部品に圧力をかけ、余計なフリクションに繋がってしまうのです。
まとめると、高速走行やサーキット走行など、横剛性の確保が重視されるスポーツカーなどには単筒の倒立式を。街中を普通に走るだけなら複筒式のほうがフリクション面では有利ということです。
ちなみに複筒式を倒立させると気泡が混じりまくって使い物にならなくなります。倒立どころか傾けることすら怪しいので、車によってはサスペンションのレイアウト上単筒式ダンパーしか使えない、といったこともあります。
安定した減衰力を発生し続けられること
では最後に作動安定性の観点から、単筒, 複筒それぞれの構造を見ていきましょう。
ダンパー内部は密閉された空間。そこでタイヤの上下動を抑えるダンパーの仕事は”熱”に代わります。
ダンパーが激しく上下に動くと内部のオイルが攪拌(シェイク)され、温度上昇と相まって気泡が発生しやすくなります。
当然気泡が発生してしまうと、オイルの粘度が落ちるのと同じ理屈で減衰力が低下します。
そこで注目してほしいのが、ダンパー内部のオイル量です。以下は記事の始めにお見せした図になります。
改めてこうしてみると分かりますが、単筒式のほうがオイルの容量が多く、ピストンの径も大きいことが分かります。またシリンダー壁が外気に触れやすい構造であることも確かです。
これらのことから、単筒式は熱に強く、また冷えやすいのです。おまけに大きなピストンが使えるため、減衰力のセッティングも複筒式より細かく行うことができます。
特にレース界など、温度が上昇しやすい環境では単筒式がかなり有利になってきます。
まとめ
ダンパーの性能を左右する3つの条件に着目して解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
結論としては、複筒式は街中や高速道路でもゆったりと普通に運転する人向け。
対して単筒式はスポーツカーのような”走る車”に最適化された設計となっているということですね。
単筒式はガス圧や加工精度の要求から価格が高くなりがちですが、だからといって決して全てが複筒式に勝っているわけではないということです。
お互いのメリット・デメリットを正しく理解して、最適な車高調を選びましょう!
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